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死者の書 (創元推理文庫)死者の書 (創元推理文庫)
(1988/07)
浅羽 莢子

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 ぼくの目の前で少年がトラックにはねられた。事故のあと町の人間が聞いてきた。「あの男の子、はねられる前は笑ってました?」笑って?……ここはアメリカの小さな町。一人の天才作家が終生愛した町。ぼくは彼の伝記を書くために逗留している。でも知らなかった。この世には行ってはならない町があることを。衝撃のダーク・ファンタジイ。

 おー、これは、この世界観は好み。アメリカの小さな町ゲイレンでは、誰もがお互いのことをよく知っている、閉ざされた町だった。もうこの設定だけで喰いつける。物語半ばで謎が序々に明らかになるにつれて、読み手はかなり困惑していきますが実はそれすらも伏線になっている。創元文庫のファンタジーから出版されてはいますが、これはホラーでありファンタジーであり、ミステリーでもあるのです。読み終えた後に多くの余韻が残る作品。
★★★☆☆
くじ (異色作家短篇集)くじ (異色作家短篇集)
(2006/01)
シャーリイ ジャクスン

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 町中の人が集う広場で行なわれるくじ引きで、いったい何が決まるのか-。表題作「くじ」のほか、人間の残酷さを抉り出し、読む者を狂気の世界へ誘う21編を収録した短篇集。

 第三者からの悪意、明確な理由もないままずるずると転落してしまう悲劇を書かせたら天下一品というジャクスンさん。物語の主役よりも脇役のほうが生き生きとして目立ってます。もちろんその残酷な悪意で・・・。第三者本人が自覚していない悪意っていうのはよくありますが、シャーリイ・ジャクスンの書く悪意は明らかに確信的な悪意。なぜ全くの他人からそんな悪意が生まれているのか。そんなところでゾッとします。さすが魔女とまで言われたシャーリイさん。
倒立する塔の殺人 (ミステリーYA!)倒立する塔の殺人 (ミステリーYA!)
(2007/11)
皆川 博子

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 戦時中のミッションスクールの図書館の本の中に紛れ込んでいた1冊の本。蔓薔薇模様の美しい装飾の本には「倒立する塔の殺人」というタイトルだけが書かれていた。少女たちの間で小説が回し書かれ手から手へ、想いが紡がれていく。底知れぬ悪意とともに・・・。
 日本幻想文学の大家、皆川博子の新作。もう御歳77であるのに、この妖しい世界。戦時中の禁欲されたミッションスクールという設定の中で、交換日記のように少女たちの間で手記が交わされ、一つの小説「倒立する塔の殺人」が書き継がれていく。それぞれの思惑が手記の中にひそんでいて、作中作中作のような入り組んだ構成の背景には恐ろしい悪意がある。「聖女の島」ほど怪しい世界ではないが、その動機や交錯する想いはまさに幻想そのもの。本格的な幻想ミステリです。
深泥丘奇談 (幽BOOKS)深泥丘奇談 (幽BOOKS)
(2008/02/27)
綾辻行人

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- この世にはね、不思議なことがあるものなのです -

 綾辻行人の新刊が出ていたのについ最近気づきあわてて本屋へ走る。なんというか、ちゃんと本になったものでないと興味が持てないので、「幽」で綾辻さんが何か連載していたのは知っていましたが、全くノーチェックでした。なにげなく読んでたらP21 の7行目でウオッーーと叫ぶ。もう綾辻ファンなら叫ぶしかない文章。鳥肌まで立ててしまった・・・。
 曖昧模糊とした綾辻行人の「怪談」。なにか得体のしれない恐怖。なんだかわからないけど、少し、ゾッとする。そんな短編集。でも体調の悪いときには読まないほうがいいかも。
★★★☆☆
砂糖とダイヤモンド―コーネル・ウールリッチ傑作短篇集1 (コーネル・ウールリッチ傑作短篇集 1)砂糖とダイヤモンド―コーネル・ウールリッチ傑作短篇集1 (コーネル・ウールリッチ傑作短篇集 1)
(2002/09)
コーネル ウールリッチ

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- 観客は誰もいらない
     連れは夜の闇だけでいい <死体を運ぶ若者>-


 創元推理から出ているアイリッシュ名義の復刊を待っていましたが、とりあえずは白亜書房のウールリッチ短編集を揃えることにしました。まあ、白亜も潰れてしまっているので、もはや絶版状態なのですが・・・。こういうときにアマゾンの中古販売は使えますね。
 で、短編集の中身はというと、ウールリッチお得意の「走れメロス」系の友情もの、殺人の痕跡を隠し通そうとする「死体を運ぶ若者」、ハードボイルドな「モントリオールの夜」、と多彩なジャンルが揃っている。私は「死体を運ぶ若者」が好きで、創元推理の村上博基/訳も読みましたが、何度読んでもあのヒヤヒヤしながら死体を運ぶというサスペンスは素晴らしいですね。
ハッピーエンドにさよならをハッピーエンドにさよならを
(2007/09)
歌野 晶午

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−ハッピーエンドで、めでたしめでたし
             それはもう、むかしのお話・・・−


 事件の裏には多種多様な殺意が存在する――。一風変わった殺人の動機に焦点を当てる著者初の短編作品集。 <出版社より>
 殺人にあるのは、まず動機。最近のミステリー(のようなもの)には動機がなかったり、あいまい立ったりするものが多いと思う。まあ、本人が自分でもわからないあいまいとしたものが動機ということもありますが・・・。そしてこの短編集。歌野昌午は怒っている。現在の教育の在り方、マスコミの報道、あほうな親、などなど。その怒りが登場人物の殺人への動機となって、また歌野さんにこの小説を書かせる動機になったのではないか。なんて。
 題材がなかなか凝っていながら、小説の文章はかなり軽くて読みやすい。うーん、さすが歌野さん。葉桜で十八番芸になってしまったどんでん返しもあるし。どの作品かは読んでみてください、フフフ・・・。
★★★★☆
オランダ靴の謎 (創元推理文庫 (104-7))オランダ靴の謎 (創元推理文庫 (104-7))
(1959/09)
エラリー・クイーン

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 オランダ記念病院の手術台にのせられた百万長者の老婦人は、白布をめくると、すでに針金で絞殺されていた。犯人は病院の中にいる? エラリーを前にして、第二の殺人がおこった。作者が典型的なフェアプレイで、あらゆる手がかりを与え、読者に挑戦した本格作品。数学のように整然とした論理的構成は、クイーンならではの醍醐味である。<出版社より>
 クイーン国名シリーズ第3作目。病院内での事件ということで、今回は登場人物がやたら多く本の扉にある登場人物一覧が下まで埋まってしまうほど。だが、捜査方法の性質からか書き分け方のせいか、誰が誰だかと混乱するようなことはなく、絡んでくる人物が多いことが逆に魅力になっている。今回も"本格"の空気をたっぷりと堪能できました。でもエラリーはじめ、容疑者たちもやたら秘密主義でなかなか捜査が進まないので、私の読む速度もかなり遅くなんだかんだでようやく終わってほっとした。しかしやっぱりエラリーは好きだ。
★★★★☆
死神の精度 (文春文庫 (い70-1))死神の精度 (文春文庫 (い70-1))
(2008/02/08)
伊坂 幸太郎

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 ある時は恋愛小説風に、ある時はロード・ノベル風に…様々なスタイルで語られる、死神の見た6つの人間模様。 <出版社より>
 なにか軽い日本の小説を読もうと思って本屋をぶらついて見つけたのがこれ。値段も文庫化して550円と実にお求めやすい。買って帰ったら「また伊坂幸太郎?好きねぇ」などと言われた。いやいや、そんなに読んでないぞ。実は陽気なギャングとオーデュポンと重力ピエロくらいしか読んでいないのだが、そこはメジャー作家の知名度か。
 で、やっぱり伊坂幸太郎は読みやすい。この作品は、見かけはほとんど普通の人間と変わらない死神が主人公の連作短編なのだけれど、だんだん死神のキャラクターが固まってきて、最後のほうではハードボイルドの登場人物のようになっているところもおもしろい。死神が(仕事として)7日間、対象者の身辺調査をして死の可否の判断をくだすという設定、人間たちの運命のささやかな触媒のように存在する死神のキャラクター像などが読みやすくおもしろい原因なのかも。しかしなんとなく存在としてはアメリカの幽霊のような感じ。じつは、あの人が・・・みたいなね。
不良少女 (創元推理文庫 M ひ 3-9)不良少女 (創元推理文庫 M ひ 3-9)
(2007/11)
樋口 有介

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 現代の作家の中で、最もハードボイルドな作家と言えば、私は樋口有介を真っ先にあげます。もうこの文体の虜で、実際文体がストーリーを食ってしまっているような、そんな作家。今作では、あとがきにその文体のことについても触れているので、ファンとしては要チェックです。あと解説には今までの作品に出てきた女の人リストとその名言集まで!これは、マニアの仕事だ・・・。というわけで、作品以外のところで楽しめてしまう作品でした。小説は、まあ、いつもの樋口さんと柚木さんでした。
★★★★☆
香菜里屋を知っていますか香菜里屋を知っていますか
(2007/11/29)
北森 鴻

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 三軒茶屋の住宅街にひっそりとたたずむビアバー「香菜里屋」。そのカウンターで、マスター工藤が静かに、そして時には儚く解き明かす謎夜話、シリーズ完結編。
 なぜか、何回も行きたくなってしまう。そんな雰囲気を漂わせるビアバー・香菜里屋。それと同じ雰囲気と作風を漂わせる香菜里屋シリーズ。1作目の「花の下にて春死なむ」を読んでから、一気に4作目の本書までを読み続けてしまった。その魅力は何だったのかと振り返ってみれば、メニューにも載っていない舌鼓を打つような絶品の料理ではなく、常連客のかかえる魅力的な謎でもなく、マスター工藤の人柄や鮮やかな推理でもなく、香菜里屋が織りなすバーの空間だったのだ、なんて。登場人物と一緒に浸れた自分の場所がひとつなくなってしまったようで、なんだか寂しい。