本の紹介や読書日記。作家別一覧は「カテゴリー」からどうぞ。
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死神の精度 (文春文庫 (い70-1))死神の精度 (文春文庫 (い70-1))
(2008/02/08)
伊坂 幸太郎

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 ある時は恋愛小説風に、ある時はロード・ノベル風に…様々なスタイルで語られる、死神の見た6つの人間模様。 <出版社より>
 なにか軽い日本の小説を読もうと思って本屋をぶらついて見つけたのがこれ。値段も文庫化して550円と実にお求めやすい。買って帰ったら「また伊坂幸太郎?好きねぇ」などと言われた。いやいや、そんなに読んでないぞ。実は陽気なギャングとオーデュポンと重力ピエロくらいしか読んでいないのだが、そこはメジャー作家の知名度か。
 で、やっぱり伊坂幸太郎は読みやすい。この作品は、見かけはほとんど普通の人間と変わらない死神が主人公の連作短編なのだけれど、だんだん死神のキャラクターが固まってきて、最後のほうではハードボイルドの登場人物のようになっているところもおもしろい。死神が(仕事として)7日間、対象者の身辺調査をして死の可否の判断をくだすという設定、人間たちの運命のささやかな触媒のように存在する死神のキャラクター像などが読みやすくおもしろい原因なのかも。しかしなんとなく存在としてはアメリカの幽霊のような感じ。じつは、あの人が・・・みたいなね。
不良少女 (創元推理文庫 M ひ 3-9)不良少女 (創元推理文庫 M ひ 3-9)
(2007/11)
樋口 有介

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 現代の作家の中で、最もハードボイルドな作家と言えば、私は樋口有介を真っ先にあげます。もうこの文体の虜で、実際文体がストーリーを食ってしまっているような、そんな作家。今作では、あとがきにその文体のことについても触れているので、ファンとしては要チェックです。あと解説には今までの作品に出てきた女の人リストとその名言集まで!これは、マニアの仕事だ・・・。というわけで、作品以外のところで楽しめてしまう作品でした。小説は、まあ、いつもの樋口さんと柚木さんでした。
★★★★☆
香菜里屋を知っていますか香菜里屋を知っていますか
(2007/11/29)
北森 鴻

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 三軒茶屋の住宅街にひっそりとたたずむビアバー「香菜里屋」。そのカウンターで、マスター工藤が静かに、そして時には儚く解き明かす謎夜話、シリーズ完結編。
 なぜか、何回も行きたくなってしまう。そんな雰囲気を漂わせるビアバー・香菜里屋。それと同じ雰囲気と作風を漂わせる香菜里屋シリーズ。1作目の「花の下にて春死なむ」を読んでから、一気に4作目の本書までを読み続けてしまった。その魅力は何だったのかと振り返ってみれば、メニューにも載っていない舌鼓を打つような絶品の料理ではなく、常連客のかかえる魅力的な謎でもなく、マスター工藤の人柄や鮮やかな推理でもなく、香菜里屋が織りなすバーの空間だったのだ、なんて。登場人物と一緒に浸れた自分の場所がひとつなくなってしまったようで、なんだか寂しい。
花の下にて春死なむ (講談社文庫)桜宵 (講談社文庫)

螢坂 (講談社文庫)

―香菜里屋を知っていますか?―

 住宅街にひっそりとたたずむ、隠れ家のようなビアバー「香菜里屋」。バーに通う客たちの、様々な悩みや謎を、気の利いたマスター・工藤が絶品の料理とともに解き明かす連作短編シリーズ。  今回は一気に3冊。北森鴻の「香菜里屋」シリーズです。バーに来る客が自分が遭遇した謎や悩みについて吐露し、マスターの工藤が「ささやかに」解き明かすというタイプの連作短編。ストーリー同士が絡み合い影響しあう連作短編が好きな人にとってはたまらないでしょう。そして、探偵はビアバーのマスター、ということで現場に赴かず、客の話だけで推理するという安楽椅子探偵物でもあります。
 最近、「香菜里屋を知っていますか」という単行本が出て、「知らない」と即答した私はさっそく作者の陰謀(?)にはまり、1作目の「花の下にて春死なむ」を購入。読み終わった後に2作目の「桜宵」「蛍坂」と続けて購入してしまった。ミステリの謎解きとしては、あまりすごいものではない(失礼!)のだけれども、なぜかとてつもなく惹きつけられるものがある。それはまさに香菜里屋の存在であり、マスター・工藤の存在であるのだ。『それが当店の陰謀なんです』というマスターの声が聞こえてきそうだ。バーでビールとマスターの絶品料理を食べながら謎解きをする。とても心地の良い店内の雰囲気が伝わってきて、読み終えた後には必ず、「自分にも香菜里屋のような店が欲しい」と思うようになるだろう。このシリーズが4作目の「香菜里屋を知っていますか」で終わりになるとは・・・・。いまから少し悲しい。
腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫 も 48-1)腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫 も 48-1)
(2007/05/15)
本谷 有希子

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 「あたしは絶対、人とは違う。特別な人間なのだ」
 どうしようもない人たちの家庭で起こる悲喜劇、愛憎劇。地獄絵図のような生活の中でもがく人間たちの描写が生々しく、痛々しい。現実感がないようで、それでいて実はどの家庭にも、事の大小の違いはあれ、潜在的に存在するものではないか。それにしても主人公 澄伽のバイタリティは恐ろしく、そこに悪意まであるから始末に悪い。ラストの展開後に主人公に与えた衝撃は最近読んだ小説の中でも最高クラスかもしれない。直撃するには、強すぎる・・・。
ひねくれアイテム (講談社ノベルス エA- 3)ひねくれアイテム (講談社ノベルス エA- 3)
(2008/02/08)
江坂 遊

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 ショートショート作家である著者の新作。綾辻・有栖川の復刊セレクションで入手困難だった「仕掛け花火」が手に入るようになり、ますます手軽に楽しめるようになった江坂ワールド。一口にショートショート作家と言ってしまうと、どうしても星新一が思い浮かべられ、子供の童話といったようなイメージになってしまうが(星新一も好きですけどね)、江坂遊の作品はどちらかというとブラックジョークに近い。ちょっとしたジョークの背景をさらに掘り下げて一つの小説・ショートショートにしたような雰囲気。ブラックと言っても、悪夢のようなバリー・ユアグロー的ではないので、そこはご安心を。もちろんそれ以外にも、純粋に「いい話」や愛のファンタジーのような作品も多々見受けられ、なんとまあ多彩なショートショート集だろうか。
 最後に私の好きな作品を5つ。解説の高井信が選んだベスト5とほとんどかぶらなかったが、48もショートショートがあれば人の好みがはっきりと分かれるのだろう。
「とっかえべえ」「次の停車駅」「モコと僕の曖昧な関係」「何でも半額の街」「雨の中の娘」
★★★★☆(ショートショート)
リプレイ (新潮文庫)リプレイ (新潮文庫)
(1990/07)
ケン・グリムウッド

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 ニューヨークでニュース・ディレクターをしているジェフは43歳の秋に死亡した。気がつくと、記憶も知識も持ったまま18歳に逆戻り。人生をもう一度やり直せたら・・・という窮極の夢を実現し、大金持ちになる彼だったが同日同時刻に再び死亡。気がつくと、また・・・。
 題名通り、まさにリプレイ。人生を何度もやりなおせたら、というフレーズで「七回死んだ男」や「タイムマシン」が連想されたが、この小説にその明るさがあるのは最初のリプレイのみ。何度もリプレイを続けていくうちにだんだんと主人公は深い苦悩を抱いていく、というような作品。何度もリプレイするが、同じ人生は二度となかった。自分の人生が充実していたのは、どのリプレイか。1960年代~現在までのアメリカ経済や世界情勢について、詳しく知っていればいるほどより深く楽しめるかもしれません。一応ラブ・ロマンスチックな場面もありますが、全体的に重い作品。あ~、純粋なSFは苦手だぁー。
★★★☆☆
シンデレラの罠 (創元推理文庫 142-1)シンデレラの罠 (創元推理文庫 142-1)
(2000)
セバスチアン・ジャプリゾ

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 「これから私が物語る事件は、巧妙にしくまれた殺人事件です」という言葉で始まる。私は事件の探偵であり、証人であり、被害者であり、そのうえ犯人でもある。いったい私とは何者か? 一人四役を演ずる空前絶後のトリック! 一九六二年度推理小説界の話題をさらった問題作。<Amazonより>
 あらすじ紹介にもある、「私は事件の探偵であり、証人であり、被害者であり、そのうえ犯人でもある。いったい私とは何者か?」というのが最大の魅力。ラストシーンの終わり方は、大団円というものではないが、スッーと消えるような幕引きでかなり鮮やか。 題材としては、昔のミステリによくありそうな遺産相続にまつわる話(遺産相続や遺言状にまつわるミステリは動機も単調すぎるものが多くて好きじゃない、もちろん素晴らしい横溝とかもあるが・・・)。しかし、この作品。明らかに、翻訳が下手。読みにくいし、文章としても変なところがいくつか。洋書は著者だけでなく訳者によっても作品の出来が変わってきてしまうところが難点ですね。
 それにしても、「シンデレラ」と「罠」の単語が入った作品がハーレクインにいくつかあるのだが、やはりみんなシンデレラを罠にはめたいのだろうか?
★★★☆☆
太陽の塔 (新潮文庫)太陽の塔 (新潮文庫)
(2006/05)
森見 登美彦

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 私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった!クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。<Amazonより>
 こ、これは・・・松本零士の「男おいどん」 だ!おいどんのほうが悲劇的ではあるけど。青春時代の自分へのうぬぼれと巨大な妄想力で世界を呪う小説。最初のほうは主人公が別れた恋人について「水尾さん研究」とか実地検証という名のストーカとか、かなりぶっ飛んだことをやってるのですが、同じような友人に囲まれてだんだん元に戻っていく(私はそう思ったのだ)過程が切なくも暖かい。文体はユーモアあふれていて、序盤は特に変。とにかくダメ学生のぐだぐだぶりがもの凄く上手く書かれている。読んでいて、オレは"私"であり、飾磨であり、井戸であり、高藪であるのだ、と気付き、むわー、と叫ぶ。
 そして、太陽の塔。私は太陽の塔を見たことがないので、インパクトが半減かもしれない。東京タワーやマリンタワーなどとは、なにか根本的なところから全く違うんでしょうねぇ。
★★★☆☆
腕貫探偵 (ジョイ・ノベルス)腕貫探偵 (ジョイ・ノベルス)
(2007/12/14)
西澤 保彦

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 腕貫をした役所職員風の奇妙な男が、持ち込まれる相談事に少しアドバイスするだけでスルリと謎が解けてしまう。変な安楽椅子探偵の連作ミステリ。
 また西澤さん、変な作品書いていますね。腕貫っていうのは市役所とかの職員がむか~ししていたような手首から肘あたりまでを覆う黒い腕章みたいなもののようです。作品の登場人物がなにか謎にぶつかり、困って腕貫探偵のもとへ相談に行くというパターンなのですが、この腕貫探偵、この人の名前も出てこない。腕貫をしているから腕貫探偵。ただただ悩みを聞いて、推理するというかヒントを与える役どころ。この物語の主役はその他の登場人物でもあり、この舞台となった街自体であり、それにそっと添えられるように腕貫探偵がいるのです。西澤作品で言うと、リドルロマンスに少しだけ近いかも。
★★★★☆(ユーモアミステリ)
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